残業時間について
こんにちは、社会保険労務士の野田亜以子です。
働き方改革関連法でも話題になっている「残業時間」について触れたいと思います。
そもそも残業とは何を指すのでしょうか。
就業規則や雇用契約書などで定めた、始業時刻から終業時刻までの契約上の労働時間を所定労働時間と呼びます。その所定労働時間を超える労働が「残業」となります。
さらに、残業は、厳密には次の区分に分けられます。
① 法内残業:法定労働時間(1週40時間・1日8時間)以内の残業
② 法定残業:法定労働時間(1週間40時間・1日8時間)を超える残業(→いわゆる時間外労働)
③ 休日労働:法定休日(1週間につき1日または4週間につき4日の休日)における労働
※所定休日〔法定休日以外の休日〕における労働は、その時間が法定労働時間を超えるかどうかにより、法内残業か法定残業のいずれかに該当します。
労働基準法で定める残業とは、労働基準法の定め(法定労働時間、法定休日)を超えた労働となり、上記の②法定残業と③休日労働のことを指します。36協定でカウントされる時間もこの②と③の時間です。
また、厳密にいうと残業とは異なりますが、関連するものとして、深夜労働があります。これは、所定労働時間中であるか残業中であるかにかかわらず、深夜の時間帯(22時から翌日5時まで)に労働することを指します。
上記で述べたとおり労働基準法で定める残業は、法定残業と休日労働になりますが、これらの残業を適法にさせるためには、定められた手続や要件を満たすことが必要とされています。
その内容は、次の3つすべての条件を満たすことです。
(1) 時間外・休日労働に関する協定(36協定)を、従業員代表者との間で締結すること
(2) 36協定届を労働基準監督署に届け出ておくこと
(3) 時間外・休日労働を命じる場合があることについて就業規則等に定めておくこと
ご存じの方にとっては、残業=36協定という図式が出てくるため、36協定を結んで届出していれば問題ないとどうしても思われがちです。
しかし、36協定の締結・届出だけでは、労働基準法で定める法定労働時間を超えたことや法定休日に労働させたことについて違法性を問われないという効力(免罰的効力と言われます)しか生まれず、従業員が雇用契約の決まりとして時間外・休日労働を命じられることにはなりません。そのため、(3)の要件、つまり従業員に対し雇用契約の決まりとして時間外・休日労働を命じることができる定めを就業規則等に設けておく必要があります。
本来残業は、労働基準法の建前では原則として認められない労働となります。そのため、残業をさせるためには36協定などの必要な条件をクリアするとともに、残業に対して割増賃金というペナルティの要素も持った追加割増の賃金を支払わなければならないとされています。
働き方改革の中でも重要な残業時間の上限規制、そもそも一言に残業といっても様々な区分があること、そして適法に残業させるためには、必要となる条件を満たすことがポイントです。