一般社団法人福岡労務監査推進協議会

「職場のパワハラ防止対策の法制化」に伴う相談窓口の体制整備の重要性

その他

2020-05-18

「職場のパワハラ防止対策の法制化」に伴う相談窓口の体制整備の重要性

職場におけるパワーハラスメント防止対策

 2020年6月1日から職場におけるパワーハラスメント対策は、セクシュアルハラスメント(以下セクハラ)対策や妊娠・出産・育児休業に関するハラスメント対策の強化と同様に、大企業では義務(中小企業は2022年3月までは努力義務)となり対応しなければならなくなりました。
 しかし「法律上、パワーハラスメント (以下パワハラ) 防止措置の導入が義務化されたから、従わないといけません」という説明では、経営者は納得されないケースも実務上ではたくさん見かけます。
 パワハラは従業員の自殺を招くおそれがあり、実際に会社や役員の法的責任が問われる可能性もあります。仮に訴訟が起き敗訴判決となった結果、会社のマイナスの評価・評判が広まることで、経営リスクとなるでしょう。
 また、その情報はあらゆるメディアを通じて拡散され、会社名が検索されたとき、自社のホームページの下に、パワハラ問題となった自社の判決が出てくる可能性があることなど、想像してもらいながら理解を得ることが大切です。
 労働施策総合推進法(かつての雇用対策法)の改正による職場におけるパワハラとは以下の3つの要素をすべて満たすものとなります。  

1.優越的な関係を背景とした言動であって
2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
3.労働者の就業環境が害されるもの(身体的若しくは精神的な苦痛を与える こと)
 ※客観的に見て業務上必要かつ適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに該当しません。

代表的な言動の類型(パワハラ6つの行為類型)と被害の例
① 身体的な攻撃:殴打、足蹴りを行う,相手に物を投げつける
② 精神的な攻撃:人格を否定した言動、性的指向・性自認への侮辱,他人の面 前で厳しい叱責
③ 人間関係からの切り離し:挨拶をしても無視し、会話をしない,1人だけ懇親会に誘わない
④ 過大な要求:長時間、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下で勤務と直接関係ない作業を命じる
⑤ 過小な要求:営業担当者に買い物,倉庫整理などを頻繁に強要する
⑥ 個の侵害:性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報を、了解を得ずに暴露する
※詳しいことはパワーハラスメント防止のための指針(「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」)が告示されています。また、その運用に関する通達(「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第8章の規定等の運用について」,令2.2.10雇均発0210第1号)をご参照ください。

 パワハラやセクハラなど職場のハラスメントは、人事労務管理、雇用管理における問題ですが、ハラスメントは労働者のメンタルヘルスと関係が深いため、健康管理の面において産業医その他の産業保健スタッフもその対策に関与することが求められます。

 精神障害の労災認定では、ハラスメントは強いストレスを引き起こしうる出来事として取り扱われています。労災認定の判断が迅速にできるように「心理的負荷による精神障害の認定基準」が定められており、この度の職場におけるパワハラ対策の法制化をふまえ、「精神障害の新しい労災認定基準」も現在検討されており、最終的な評価基準がどのようになるか注目すべきです。
 ご存知のとおり、職場における優越的な関係(優位性)とは上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものも含まれます。さらに優位性は、役職以外に年齢、経験、知識、スキル、雇用形態(パートやアルバイトおよび派遣)、取引上の力関係(発注元と発注先)などに表れます。

職場におけるパワーハラスメントの相談窓口

 職場におけるパワーハラスメント防止対策として、苦情・相談の一次対応は、相談窓口※1が行います。したがって、相談窓口の初期対応のありかた次第ではハラスメントを未然に防いだり、深刻化することを防ぐなど、ハラスメント防止の上では極めて重要な役割を担います。そのため気軽に相談できる窓口とする必要があり、内容等に応じて適切に対応できるような体制整備が求められます。
 また事前に、事業主の方針として職場におけるパワーハラスメントを行ってはならないことを明確にするとともに、これを従業員に周知・啓発しなければならないことが指針にも明記されています。

※相談しやすい「相談窓口」の体制とは
① 相談者がより相談しやすい相手を選べるように、男女複数人を選任する
② ハラスメントや人権問題に十分な理解を持つ人、日頃の言動が同僚に信頼さ れている人、人の話を傾聴できる人、中立的な立場で問題解決に取組む人などから選任する
③ 社内の産業保健スタッフ(保健師、看護師、カウンセラー)からも選任する
④ 相談受付経路は面談のほか、電話、メール等を複数設ける
⑤ プライバシー保護と不利益な取り扱いがないこと、些細なことでも相談に応じること、相談対応の流れなどわかりやすく示し、周知する
⑥ 周知は入社時のオリエンテーションの際やハラスメントに関する定期的なアンケートなどで幅広く行う
⑦ 相談者の上司や人事担当者との連携および職場内から情報が取れる仕組みづくり
⑧ 相談担当者が研修等の受講を通じて相談対応に関する資質の向上を図れる仕組みづくり
⑨ 相談対応の留意点(相談記録の保管・取扱いルール)をまとめたマニュアル類の整備
⑩ 産業医はじめ医療・法務専門家へのルート確立および困難事例への助言・援助の体制整備

 相談窓口の担当者はハラスメントの相談・苦情への対応(相談対応・解決処理の手順※2)をする中で「相談者」・「行為者」・「第三者」への事実確確認から問題解決に至るまで、ケースによっては再発防止のサポートもすることになります。したがって、ハラスメントに対する正確な理解と知識が備わるように教育の機会を与える必要があります。
 これらを参考に、相談窓口を見直しされ、法制化に備えていただければ幸いです。  

 上記内容を含め、就業規則の整備や衛生委員会等による周知・啓発のアドバイスおよび職場環境改善のキーパーソンとなる管理職に対するハラスメントやメンタルヘルス研修にも対応いたしますのでお気軽にご相談ください。

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